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高気圧酸素療法(HBO)の適応
高気圧酸素療法(HBO)の適応には様々なものがあります。
その一つに糖尿病による創傷がありますが、高気圧酸素療法を始める前にこの治療が本当に適応であるかどうか、厳密に評価することは大変重要です。
HBO療法の適応
空気塞栓
CO中毒
ガス壊疽 圧挫損傷 コンパートメント症候群 急性外傷性虚血
減圧症
網膜動脈閉塞症
問題のある創傷の治癒促進
重症貧血
頭蓋内膿瘍
壊疽性軟部組織感染
骨髄炎
遅発性放射線障害
グラフト、フラップ不全
急性熱傷
(http://www.uhms.orgによる)
糖尿病性足創傷治療に高気圧酸素療法を用いたケースレポートの抜粋をご紹介します。
糖尿病性足創傷の高気圧酸素療法-賢明な選択か: ケースレポート HBO療法を行った糖尿病性足創傷とHBO療法を行わなかった糖尿病性足創傷の切断に関しての比較臨床試験によるとコントロールグループの切断率は33%-40%であるがHBO療法を行ったグループは8.6%-12%であるという結果がある。2006年10月に高気圧医療ヨーロッパコミティとヨーロッパ組織修復協会はHBO療法は糖尿病性創傷による大切断を減少させるのに効果のある治療であると結論づけた。 問題のある創傷の治療において重要な点は1)原因 2)治癒遅延理由 3)細胞酸素濃度 である。HBO療法は第3の問題を改善させ、治癒環境を最適にすることができるが、HBO療法は医療制度に多大な経済的負担をかけるばかりでなく、創傷治癒のための初期の創傷管理を遅らせる原因にもなりうる。HBO療法の間違った用法・過剰使用の頻度は文献には発表されていないが、HBO療法を使った創傷治療に関する懸念は新しいものではない。 次に、シャルコーフット治療のケースレポートでHBO療法の適応外の例を紹介する。創傷管理には総合的なアプローチが必要であることを示している。
低温やけどとは?
低温やけどは60度前後で約1分、50度前後で約3分、45度前後でも約6時間、熱源が同じ部位に接触していると起こるといわれています。低温やけどの場合、低い温度でゆっくりとやけどが進むため、やけどが起こっていることに気づかず、症状が重くなってしまいます。熱傷進度がII度、III度*という重症にいたることもしばしば見られます。
*熱傷進度II度: 熱傷が表皮と真皮に及び、発赤、腫れ、水疱がみられる。汗腺、毛嚢(もうのう)に影響が及んでいる時もある。 熱傷進度III度: 熱傷が表皮、真皮、皮下組織に及び、皮膚が白色になる。皮膚の表面が壊死していることもある。 低温やけどの原因となる熱源例としては 使い捨てカイロ 湯たんぽ あんか 電気こたつ ホットカーペット ラップトップノートパソコン などが挙げられます。 一度皮膚が破れてしまったら、創傷として治療を行います。傷が深い場合もありますので、医師に必ず診てもらうのがいいでしょう。創傷ケアセンターでは熱傷の治療もしています。お近くの創傷ケアセンターで診てもらうこともいいでしょう。
参照: 実地医家における創傷治療のポイント 低温熱傷と褥瘡の管理を中心に MEDICAMENT NEWS 第2046号(13)
http://www.imc.or.jp/column/mame0601.html
低温やけどの1例
The Symposiium on Advanced Wound Care
Fallll 2010
毎年春・秋の2回開催される米国最大の創傷ケアの学会で、創傷ケアの最新技術、被覆剤などの情報を入手することができます。
今回は2010年秋に訪れた時の記録をご紹介します。最新の開催日に関してはhot_topics/hot5.htmをご参照ください。
2010年9月23日から25日カリフォルニア州アナハイムにて開催されたSAWC FALLにいってまいりました。
持続陰圧吸引の製品は、1年前の学会では、10社以上から製品がでていましたが、今回はわずか5社に減っていました。
売れない会社の製品は、自然淘汰された可能性があります。ケーシーアイ日本法人のVACとして日本市場にも進出をはたしたKCIの最新の製品としては、術後縫合部の浮腫が予想される場合に使う製品が紹介されていました。吸引ポンプ部分は使い捨てで、吸引部の皮膚にあたる部分にメッシュがかかっており、125mmHgで吸引し、3日おきに吸引分のスポンジを交換します。
被覆材は、ありとあらゆる種類がでていますが、創傷の上にのせるシートではなく、粉が創傷の上にのるとシート状に変化する高親水性のポリマーがありました。この利点は、創傷のでこぼこ部分にもぴったりとくっつくということです。
シルバーが含まれる被覆材もさらに増えていました。被覆材を作っている会社の製品のうち、必ず1つはシルバーを含む製品があるというほどの勢いでした。
被覆材の形にも工夫が凝らされています。体の部位にフィットするようにカットされています。
学会への参加にご興味のある方には参加のお手伝いをさせていただきます。
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創傷治癒の妨げとなる薬物には様々なものがあり、さらに疼痛を伴う潰瘍もある。
治療を始める前に、患者が使用している薬物をすべて把握し、その中に創傷の原因もしくは
創傷治癒の妨げになっているものがないか知る必要がある。
疼痛を伴う下肢潰瘍と創傷治癒の妨げとなる薬物の例
はじめに 血流障害のある患者において、下肢潰瘍はよくある症状である。慢性下肢潰瘍の95%は虚血、うっ血、神経、そして他の状態(血管炎、高血圧、梅毒など)に起因する。以下のレポートは、当初血流障害が疑われたものの、下肢潰瘍には珍しい原因であったケースを報告するものである。
56歳の男性が3ヶ月続く疼痛を伴った下肢潰瘍のため創傷ケアセンターに入院。患者は両下肢に静脈不全の既往があり、深静脈結紮術(SEPS)を行っていた。 患者は2年前にも足首に似たような創傷ができ、圧迫療法で治癒しているが、今回は治癒していない。
診察では、左踝部、脛骨部、足背面にサイズ10 mm2 × 10 mm2 から 50 mm2 × 50 mm2の潰瘍が4つ。
じくじくした潰瘍は浅く、潰瘍縁は不明瞭。茶色の色素沈着を伴う浮腫が広がり、周辺の皮膚は鱗状に剥げ落ちていたが、骨、腱、靭帯、筋肉に達してはいなかった。潰瘍は強い疼痛を伴い、潰瘍周辺には発赤があった。白血球数、血小板数、生化学的検査値、血糖値など全てのラボデータは正常であった。
治療には当初、創傷ドレッシング、圧迫による浮腫コントロール、抗生剤、外科的デブリードメントが用いられたが、どの潰瘍にも治癒傾向は見られなかった。
【潰瘍,足,傷】【動脈硬化】【足,静脈】【糖尿病,腐る】
【床ずれ】【壊死】【足,傷】【潰瘍,足】
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